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ぼうずやのにっき

雨の日の隕石

先輩は「雨が降っているよ」とぼくに言った。ビルを出たところで気づいて、傘を取りに戻ってきたのだろう。ぼくにそう言ったあと、またすぐに出て行ってしまった。

ぼくは机の下から折りたたみ傘を持って職場を後にした。電車に揺られながら携帯を見る。ミサイルと呼ばれている北朝鮮のロケットについてのニュースについて書いてある。ミサイルも打ち上げロケットも積んでいるものくらいしか違いがないはずだけど、北朝鮮のものはミサイルらしい。そんなことを考えているうちに最寄り駅に着く。

帰りに近所のスーパーでココアを買う。出口のところで、カップルが「わあ、雨だ」と困っている。もし、ぼくが傘をあげれば、この二人は濡れなくて済むだろう。ぼく一人の犠牲で二人が救われるのだ。そんな想像をした。

たとえば、ぼく一人の命と引きかえに世界を救えるとすれば、ぼくは迷わず名乗り出るだろう。それは誰かのHEROになりたいからではなく、ぼくの命にそれほどの価値がないからだ。死ぬことを許されるだけの理由があるなら、ぼくは死ぬだろう。

ある日ぼくに隕石が落ちればどんなに幸せだろうとぼくは思う。誰もぼくを責めたりしないだろう。そう考えたぼくは「ぼくは隕石になりたい」と試しに言ってみたら笑われた。真面目な顔で言ったのが良くなかったのかもしれない。ぼくは隕石になりたい。ぼくはぼくに落ちてぼくは死にぼくは砕ける。そこに価値なんてない。

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